10th.LOVE LETTER

POEM「季節外れの花粉症 ~Catch A LOVE~」


新宿のバスターミナルは いつも会えない日々の始まり

もっと話したい気持ち裏腹に 静寂を保つ23時38分は 君の終電がなくなる頃 

僕が住む田舎とは違い 都会は雨が降ると 寂しさに似た寒さがそっと街を包み込む

一本の折りたたみ傘の下 HOTの紅茶に身を委ねながら 見えない日々を探す


片道6時間半の恋愛は 想像力がものを言う

君が東京に行ってから 一度もしていないケンカ

傷がつかないように 傷をつけないように

ぎこちなく演じてしまう 新生活ドラマの中では 上手なアドリブができない

もう少し気の利くヒーローなら 君に無理はさせないのに

二人の視線に纏わり付く 生温い空気を吸えないまま

思いやりが校正した デジタルの文面を頼り 君のカゼにさえ気付けず


「季節外れの花粉症」

君の周りでこれから咲く花が 悲しみの雨に濡れないように


はみ出したマスクの下に 窒息しそうな笑顔

今回もお互いの寂しさを 交換できないまま 

眠らない街新宿に バスがイビキを立てやってくる 

並ばなくていい列に並ぶ君を このまま連れ去りたい

そんな感情を遮る様に 一枚しかない乗車券が キリトリ線の上のアリアを奏でる

体で唯一汗をかいていた左手は ここにきて初めて夜風を浴びる

またすぐに会えるからと 本日最後のウソをつく

バイバイと、小さく遅く手を振る

さっきまで君がいた僕の隣に はじめましての他人が座る

見詰め合う二人を バスの窓ガラスさえ 白く邪魔をする

見えなくなるまで 手を振る暗黙のゲームは いつも判定つかずの引き分け

今なら泣いても 冷たい雨で君には見えない


バスが歯軋りを始め 君に背を向け走り出す

HOTの紅茶がCOLDになる頃

部屋のカレンダーに赤丸をした日が終わる

透明な高速道路の景色に 君の笑顔を浮かべていると

何故か止まらない咳に 完全犯罪の形跡を見る 

夢の中で直接君に 被害を訴えられるよう願い 重いまぶたを閉じる

交換できなかった寂しさより 感染した思いやりを抱いて


「季節外れの花粉症」

これから二人に咲く花が 会えない日々と距離に 枯れないように

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