小満

愛し君へ


汗ばむ陽気になってきた今日この頃、いかがお過ごし?

今年初の半ズボンを履いてこのラブレターを送ります。


君の自宅生活はどう?刈川は元気です。

ちょっと前までは

「この時期に何か習得しなきゃ」

って気持ちでいっぱいだったんだけど、

今はより自然体に生きています。

というのも、この一か月で映画を何本も見たんだけど、

映画を見るのって意外とパワーいるんだよね。

寝る前に見ると、物によっては色々考えこんでしまって寝付けなかったりする。

余裕がある昼に見るのが一番いいかもね。

こーゆー時のおすすめは、読書。

自分のペースで読めるし、場所や時間を選ばない。

そんなわけで刈川は長編小説をこの一か月くらい読んでいるよ。

君は読書するかな?もししないのであれば、この機会に是非お勧めするよ。


たまたまというか、今読んでいる本が今の状況と重なっている。

その本は村上春樹さんの「騎士団長殺し」

もしかして君はもう読んだかな?

肖像画家の主人公が妻との離婚話から自宅を離れ、

友人の父親の山奥にあるアトリエに住む話である。

その友人の父親は現在、老人ホームに住んでおり、著名な日本画家である。

この小説、舞台がほとんど家の中や、敷地内の話である。

巣ごもり生活にはもってこいの話だ。

もしかしたら、君の家の中にも秘密や不思議な事が隠れているかもしれない。

ちなみに「騎士団長殺し」とは、

その友人の父親が屋根裏に隠しておいた絵のタイトルである。

まだ途中までしか読んでないが、読むタイミングとしては良かったと思っている。


本棚を整理していたら、「騎士団長殺し」以外にも読んでいない本が20冊くらいあった。

その本たちを一角に集めて、俯瞰で眺めてみると、

自宅なのに知らない空間がそこに存在する。

日本船主協会によれば、宇宙旅行より海底旅行の方が難しいという。

電波や水圧の関係で月に行くより、海底に行く方が大変らしい。

今の巣ごもり生活は深海探検に似ている。

自宅という見慣れている当たり前の場所に、

知らない一角があるというワクワクを楽しみたい。

まあ大体発見されるのは、いつか着ようと思って何年も着ていない服だったりする。

もしくは期限切れのクーポン券。


この生活ももう長くは続かないかもしれない。

少しずつ日常が戻りそうな気がする。

でも、そんな時だからこそ、気を付けてほしい。

子供の頃よく遊んだ「すごろく」

ゴールの一つ前のマス目は決まって「振り出しに戻る」だった。

サイコロは運だけど、自分たちの行動は、自分たちで決められる。

焦って6の目を出して振り出しに戻る事は無い。

急がば回れ。こんな時だからこそゆっくり行こう。

それが刈川と君の会える時間を短くする唯一の近道だと思って。

次会える時まで、会えない時間を大切に。


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