啓蟄

愛し君へ

日本中が慌ただしい今日この頃いかがお過ごし？

まずは深呼吸して落ち着く事をおすすめ致します。

君はたまたま近くにいた、赤の他人の会話が気になった事ある？

今、このラブレターを喫茶店で書いている。

この喫茶店は40年以上前からこの土地にある。

ゆるゆるのソファーと日焼けしまくったメニューが歴史を物語っている。

そして昼なのにとても暗い。LEDって明るいんだね。

10mくらい離れた場所に男性が4人。1人が大声で何か話している。

聞こえてくる内容からするに、話題は金銭トラブル。

お金に困っている若者とその父親。

反対側に座るのはいかにもカタギじゃなさそうなスーツ姿の男性2人。

まるでVシネマの撮影現場にいるようだ。

本当は書こうとしていたラブレターの内容より、漏れてくる話が気になり、メモを取る。

ここから約30分。

聞いた話をまとめると、若者が出した損失を補填するために、違う儲け話を持ってきた。

しかし、父親が反対しに来た。でも損失を補填できるだけの持ち合わせはない。

ちなみにこれ以上の内容はとてもラブレターで書けるようなものではありませんでした。

ドラマみたいなシーンが現実に起きているんじゃなくて、

現実に起きているシーンをドラマにしているんだと思った。

たまにこれを忘れる。現実は小説より奇なり。

そして次の日、電車に乗った。

目の前で二人の女子高生が話している。

最近の流行りなのか、やたら「それな」という言葉が多い。

しかも、片方が「それな」と言うと、もう片方が「それな」と連続して会話をしている。

英語にすると「Yes.」「Yes.」と会話している感じなのだろうか。

そしていきなり踊り出した。

片方のリュックサックには鈴がついていてチャリチャリ鳴る。

会話からすると2人は同じダンススクールに通っている様子だった。

ラインの通知音が鳴り、鈴なりバックの彼女が彼氏からきたラインを片方に見せると、

「うわー、しんざつ」と言っていた。

多分それは、「辛辣（しんらつ）」だと思う。

まぁこの前刈川も、「ズブ」の素人を「ドブ」の素人と言い間違えたのだが。

もし、君が誰かと話す時、周りに一人でいる人がいたら、

その人は確実に話を聞いていると思った方がいい。

これがスマホを見ていようが、イヤホンをしていようが、

もしかしたらその態度を装って聞いている可能性が高い。

なので公共の場では不用意な話をしない事だ。身をもって知った二日間でした。

君には誰かの話より、刈川の歌を聞いてほしいのでデートの約束をしよう。

次会える時まで、会えない時間を大切に。