近所の町工場で車を直してみた

愛し君へ


体育祭に文化祭、秋真っ盛りの今日この頃いかがお過ごし?

今年は去年より楽しめていると良いな。


君の近所に、昔ながらの工場ってある?

今回のラブレターはそんなどこにでもありそうな町工場のお話。

先週、車の運転中にバキって音がして、

そこから停止中に車の後方でカタカタ音が聞こえるようになったんだ。

不安になって修理する事を決めたよ。

ついでに先月から調子の悪いトランクのカギも直してもらおう。

4月にバッテリーが上がった教訓を生かし、まず保険会社に電話をしたよ。

するとレッカー車を無料で手配してくれる事になったよ。

自走も出来るんだけど、レッカーを頼まないと、

レンタカーのサービスが受けられないらしい。

ただし、修理先は自分で手配しないといけない決まりだった。

というわけで、大手カー用品店に電話をしたよ。


刈川「もしもし、修理をお願いしたいんですけど」

店員「どちらが壊れていますか?」

刈川「確かではないんですけど、マフラーの辺りから異音がします」

店員「原因をお調べする所からですね」

刈川「来店予約は出来ますか?」

店員「修理のお客様は予約できないんですよ」

刈川「では直接お店に行って見てもらう感じですか?」

店員「来ていただいても予約の方が優先なので対応できない場合があります」

刈川「今日は割と空いていますか?」

店員「ちょっと作業の工程もあるので何とも」


連休という事もあって混んでいるのだろう。

何だかすごく来てほしくなさそうな感じだった。

というわけでお店を変える事を決めたよ。

ネットで検索しようとした時に、ふと近所にある自動車工場を思い出した。

その自動車工場はいかにも個人経営的な感じで、

立てかかっている看板が明らかに昭和だった。

思い切って電話をかけてみたよ。


刈川「すみません、修理をお願いしたいんですけど」

店員「はい、以前どこかで取引ありましたか?」

刈川「いや、初めて電話するんですけど」

店員「そうですか、どこが壊れていますか?」

刈川「マフラーの辺りと、トランクのカギが調子悪いです。」

店員「そうですか。いいですよ。」


早っ!!


刈川「では保険会社から電話がいくと思います。レッカーで行きますので。」

店員「はいはいー。お名前と連絡先だけ教えてください。」

翌朝、レッカー車が来て、刈川の車はその自動車工場に向かった。

刈川は用事があったので、夕方向かったよ。

工場に着くと、70代くらいのあんまり歯の無い男性が迎え入れてくれた。


店員「刈川さんですか?」

刈川「はい、そうです。」

店員「どこが壊れていますか?」


…あれ?昨日電話で言ったような、、、


刈川「マフラーとトランクの辺りです」

店員「そうですか、とりあえずエンジンをかけてください」

(エンジン音…カタカタカタカタカタカタ)


店員「ちょっと走ってみて」

(刈川工場の入り口を徐行&停車)

店員「ああ、これね。車あげてみないとわからないけど、多分大丈夫」


本当か??


刈川「次はトランクを見て欲しいんですけど」

(店員がトランクを開ける)

店員「ちょっとそこのボタン押していて」

(刈川、自動制御ボタンを長押しする)

店員「これは開けてみないとわからないな。ちょっと押さえていて」


ここから約15分、二人でトランクのカギ周りのボディを外したよ。

っていうかどうやらこの工場、オジサン1人で切り盛りしているらしい。

ってか、このオジサン、社長だ。

少し伝わりづらいのだけど、この一連の流れ、実は結構楽しかったんだよね。

大手で修理を頼むと、大体駐車場で車を預けるだけなんだけど、

オジサンはどこが壊れているかとか、

どうゆう仕組みなのかを事細かく説明してくれたんだ。

一通り見た後、今後の流れを確認した。

連休あけに部品を頼んですぐに直りそうだ。


そしてそこから約一時間、立ち話になった。

オジサンはいきなり電話が来てビックリした事や、

20年前に工場の半分を道路用に売った事。

車の設計は船の設計と似ている事。

半分くらいよくわからなかったけど、何だか楽しかった。

刈川にはおじいちゃんがいなかったから、

何だかおじいちゃんと日曜日にDIYをしている感じだった。

最期に見積を聞くと、

店員「うーん、部品にもよるけど3~5万だな」

3万と5万じゃ結構違う気がするけど、まあいっか。

それに今更やめるなんて言えないし。

承諾をして、その日はそこでお別れをした。


そして連休明け。どうなったが気になり刈川から電話をした。


刈川「こんにちは。車どうですか?」

オジサン「夕方までに直るか五分五分だ」

刈川「では直ったら電話ください」


もう抵抗ない。そして夕方4時に電話がかかってきて無事修理が終わった。

突然押し掛けた事と、ここまでのやり取りが楽しかったので、

工場に行く途中に和菓子屋によって詰め合わせを買った。

工場に着き、これまた丁寧に壊れていた部分の説明を聞いた。

ちなみに修理代は約4万でした。お見積り通り。

最後に買ってきたお菓子をあげると、


オジサン「ありがとう。もう何年も人からお菓子なんてもらって無いよ。

本当ならこっちが何かあげなきゃいけないくらいなのにな」


と言われた。仕草がとても可愛かった。

工場を出てから、刈川は車内で吉田拓郎の「洛陽」をかけた。


♪苫小牧発・仙台行きフェリー~あのじいさんときたら~

わざわざ見送ってくれたよ~おまけにテープをひろってね女の子みたいにさ~♪


ちょっとだけこの曲の感じがわかった気がした。

結果的にすごく楽しかった。

効率や明朗性を問われるこの時代に置いて、

アバウトなやり取りも悪くないと思った。

車が壊れた時はすぐにあのオジサンに電話しよう。

本当は壊れないのが一番だけどね。

君の近所にもそうゆうお店があるかもしれない。

もしよかったら冒険してみてね。

デートの約束をしよう。

次会う日まで会えない時間を大切に。

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