沢田マンションへ

愛し君へ


冬と春が行き来する今日このごろ、いかがお過ごし?

君はもう知っているかもしれないけど、先日高知県に行ったよ。

実は前々からずっと行きたいと思っていた場所があってね。

君は「沢田マンション」って知ってる?


このマンションは沢田夫婦が独学で作った地下一階、

地上五階建ての巨大なマンションなんだ。

1971年から建設が開始され、増築に増築を重ねているよ。

今の時代では絶対作れないような、

唯一無二のマンションなんだ。

「日本のサグラダ・ファミリア」や「日本の九龍城」とも呼ばれるよ。

5年ほど前に雑誌で見かけてから、

沢田マンションへの想いは膨らみ、

記事や写真をよく見ていたよ。


高知駅からタクシーに乗車。

行き先を聞かれて「沢田マンションまで」と答えると、

「建築関係の人ですか?」と聞かれた。

運転手さん曰く、年に何回か建築関係の人を乗せるらしい。

「いえ、沢田マンションを見に東京から来ました」と答えると、

これまでの経緯などを丁寧に話してくれた。

地元ではもちろん有名だそう。


高知駅から10分ほどで沢田マンションに到着。

まず着いて思ったのが、思ったよりも大通りの近くにあってビックリしたよ。

巨大スロープ、むき出しのエレベーター。

「おおぉぉ〜」っと大きめの独り言。

さっそくルールに従い見学。

そしてすぐ迷子に。

上に行く階段が見つからない。

建築関係の資材置き場の横に発見。

その階段に驚愕。段の幅が均等じゃない。

そして各部屋の入り口が全然違う方向を向いている。

さらに、廊下を挟んで物干し竿が置いてある。

洗濯物と玄関の間に廊下がある。

上の階はさらにすごい。いきなり池が出てきた。

本当にドラクエのダンジョンで上にボスがいるような感じだ。


そして生活感がすごい。

この建物が呼吸をしている感じ。

廊下に何本も干されたバラのドライフラワーに、

小窓の柵に立て掛けられている、

その部屋に住んでいる人の数より明らかに多いビニール傘。

だた建物内を歩くだけで、凄まじく興奮をする。

こんな経験、初めてだった。

沢田御夫婦の想いやこだわりに、

住民や店舗を構える人たちの愛着が掛け算のように膨らんでいるようだ。

愛を感じるというか、温度を感じた。


ジャンルは違えど、同じものづくりとして、とてもパワーを貰えた。

こだわること、続けること、綺麗にやろうとしないこと。

どんな建物でも住んでいないダメだなと。

どんなにいい曲でも、歌い継がれなくてはダメなんだと。

そんな事をこのマンションが刈川に教えてくれた気がする。

ちなみに沢田マンションは現在も入居者募集中で、

カフェやネイルサロンのような店舗も入ってます。


やっぱり時々は旅に出て色んな物を吸収しなきゃだね。

これで未踏の県は福井、和歌山、島根、長崎、宮崎の5県。

さて、次はどの県に行こうかな。

またラブレターで君に土産話ができますように。

デートの約束をしよう。

次会う日まで会えない時間を大切に。

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